都市交通の分野でデータ活用について検討していると、ロジットモデルという分析手法を提案されることやロジットモデルでの分析結果を提示されることがあると思います。
ロジットモデルは様々な分野で活用される手法で、都市交通の分野においてもいくつかの場面で代表的な手法として使用されています。
本記事では、ロジットモデルの名前を初めて聞いた人から聞いたことがある人を対象に
- 何のために行うのか
- 何に気を付けた方がよいのか
- 都市交通では、どんな場面で使われるのか
という点について解説していきます。
ロジットモデルとは
ロジットモデルとは
ロジットモデルとは、複数の選択肢から確率的に選択対象を決定する行動をモデル化する手法です。例えば、交通の分野では徒歩・自転車・自転車・電車といった、交通手段の選択をモデル化することが代表的な活用方法です。
このとき、選択肢となる変数を目的変数と呼び、選択肢の特性を表現する変数を説明変数と呼びます。交通の分野で手段選択の例では、目的変数は選択肢となる徒歩・自転車・自転車・電車、説明変数は各手段を使用したときの時間や金銭的な費用がそれにあたります。
ロジットモデルの目的
ロジットモデルを用いて、複数の選択肢から選択対象を決定する行動をモデル化することは、大きく2つの目的があります。
目的1:目的変数と説明変数の関係性を分析する
目的変数と説明変数の関係性を分析することで、その特性を把握します。例えば、交通手段選択のモデルを分析する場合、
- 移動時間と選択されやすさの関係性
- 必要な費用と選択されやすさの関係性
等、説明変数に設定した変数と各手段の選ばれやすさについて把握することを目的とします。これによって、何かしらの目的(例えばバスの利用者数を増やしたい)に対してどのような施策が有効かということについて検討を行います。
目的2:目的変数の予測をする
ロジットモデルを構築することで、説明変数が変化した際の目的変数変化を予測することができます。これによって、今後行いたい施策を実際に行った際にどのような変化をが発生するか試算することができます。
例えば、交通手段選択モデルについて考えると、バスの利用料金を下げることでバスの利用者数を増やす施策を検討したとします。このときに、ロジットモデルを用いてバスの利用者数の変化を試算することで、
ーバスの利用者増による、料金全体の増加分が多い
ーバスの利用料金減による、料金全体の減少分が少ない
どちらの可能性が大きかということを、定量的に把握することができるという点にメリットがあります。
ロジットモデルの定式化
ロジットモデルは、以下のような形で表現されます。以下の式は、ある選択肢(i)の選択確率を、選択肢の特性を表現した変数(β)の線形和を用いて作成した効用 (Vi) によって表現しています。
このとき効用 (Vi) とは、各選択肢の魅力を定量的に表現する変数で、上記の式のように各選択肢の説明変数とパラメータとの積を合計した形で表現します。ロジットモデルでは、この効用によって各選択肢の魅力を表現し、その魅力に応じた比率で選択行動が行われることを前提に分析を行います。
結果の見方
ロジットモデルは、上記で説明した式に対してパーソントリップ調査やGPS調査を活用したデータを当てはめることによってパラメータの推定と呼ばれる作業を行い、このパラメータが推定されることでモデルとして活用が可能になります。ここでは、パラメータの推定結果について、確認の方法を解説します。
結果の表現
ロジットモデルの推定結果は、以下のような形で示されます。パラメータは各変数の重みを示しており、t値は各パラメータの統計的な信頼性を示しています。尤度比はモデル全体の適合度を、的中率はモデルを使用した予測結果の的中率を示しています。
結果が示すこと
パラメータ
パラメータは、絶対値によってロジットモデルの式の中での各変数にかかる重みを表現しており、符号によって当該変数が選択肢の選択確率にプラスの影響を与えるのかマイナスの影響を与えるのかが表現しています。
例えば、上記の表では所要時間のパラメータがマイナスになっているので、所要時間が長ければ長いほどその交通手段選択は選ばれにくいモデルになっていることがわかります。
t値
t値は、その絶対値によって推定されたパラメータの統計的な有意性を表現します。統計的に有意かどうかを判定する閾値は慣習的に有意水津5%や1%が使われています。目安として、t値の絶対値が1.96以上の場合5%の有意水準を満たしており、2.32以上のの場合1%の有意水準を満たしているとみることができます。
尤度比・的中率
尤度比と的中率は、いずれもモデル全体の適合度、データに対する当てはまりの良さを表現します。ざっくりと考えると、モデルの出来の良さを表現しているとみることができ、基本的はこれらの値が高い方がよいモデルだと考えることができる。(これらの値が高すぎる場合はその限りではないので注意が必要。)
結果を見るときの注意点
説明変数の符号の理論的な整合性
結果を見るとき、一番に確認したいことは説明変数の符号についての理論的な整合性です。例えば、交通機関選択モデルでは、料金が高い手段ほど利用率が低いと考えられるので、料金のパラメータはマイナスであることが理論的に整合性のあると考えられています。このように説明変数の符号に理論的に整合性があるかは、前提条件として確認します。
相関関係であり因果関係ではない
ロジットモデルで推計されるものは、あくまで相関関係であり因果関係です。
つまり所要時間がが短い手段ほど利用される傾向があるという相関関係はありますが、所要時間が短くなったある手段の利用率あがることを示しているわけではありません。このことに注意をしつつ、あくまでそのような傾向にあるということ示す結果であることを理解したうえで、節度を持って結果を解釈する必要があります。
都市交通分野での利用事例
交通分野では、とても多くの場面でロジットモデルが活用されます。その代表的な活用場面を示します。ただし、ロジットモデルは様々な場面で活用されるので、複数の選択肢(2項を含む)の選択をモデル化する多くの場面で活用されるので、以下で示すのはごく一部の代表的なものであると理解ください。
交通手段選択モデル
本記事にて一貫して説明に利用したように、交通手段の選択モデルにてロジットモデルは活用されます。交通手段選択モデルは、4段階推定法の中でも活用される交通分野では基本的なモデルの一つです。
目的地選択モデル
目的地選択モデルにおいても、ロジットモデルが活用されます。目的地選択モデルで使用される説明変数は、各地域の特性を示す変数と選択者と目的地との関係性から生成される変数(移動距離など)との大きく2種類の変数が使用されます。
目的地選択モデルについても、4段階推定法でも、活用されていえる交通分野ではとても代表的なモデルです。
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